ルイ・ヴィトン表参道店とは?

同潤会青山アパートの存在によって商業と住居が複雑に入り混じる特異な街並みが形成された「表参道」。
その世界的に見ても特殊な街に建つのが、このルイ・ヴィトン表参道店である。
設計を務めたのは、日本を代表する建築家青木淳。
コンセプト「機能に先行する空間の質」
このようなコンセプトを基に、ある一つの決定ルールによって構築された建築物が表参道の街と呼応し、魅力的な空間を形成している。
青木淳とは?
- 1956 横浜市に生まれる
- 1980 東京大学建築学科卒業
- 1982 同大学大学院修士課程修了
- 1982 磯崎新アトリエ勤務
- 1991 青木淳建築計画事務所設立
青木淳は、住宅から公共施設まで、あらゆる建築作品を手掛ける日本の建築家である。
代表作としては、「青森県立美術館」「潟博物館」などが挙げられる。
また、著書「原っぱと遊園地」などを中心にあらゆる独創的な建築論を展開しており、思想家としても有名である。
建築の特徴

ルイ・ヴィトン表参道店の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- トランクをランダムに積むという「ルール」
- 「ルール」から「形式」へ
- 空間の質は機能に先行する
- 多様な表情をつくるダブル・スキン
トランクをランダムに積むという「ルール」

ルイ・ヴィトンは、船旅で荷物を積みやすいように直方体のトランクを作ったことが起源にあるそう。
青木淳氏は、このことを設計のとっかかりとして、トランクのような直方体のボリュームをランダムに積み重ねるという設計のルールをまず決めた。
このルールによって、トランクからトランクへ移動しながら空間のシークエンスを楽しめるという、機能からは独立した質のいい空間目指した。
「ルール」から「形式」へ

トランクをランダムに積むという単純明快な「ルール」。
しかし、この「ルール」のまま建築化してしまっては、あまりに非合理的な構成になってしまう。
なぜなら、トランクは「内皮→骨組→外皮」という構成になっており、これを積んでいくと「内皮→骨組→外皮→外皮→骨組→内皮」というように、同じ骨組や外皮が反復し、無駄ができしまうからだ。
そこで青木淳氏は、「内皮→骨組→内皮」と構造を単純化することで「ルール」を建築の要素として「形式化」したのである。
空間の質は機能に先行する

ひとつの形式によって構成された空間の質は、機能に先行する(優勢になる)ほど良い空間となる。
- モダニズム → あらゆる機能に対応できるように空間の質を均一化(均質空間に)してしまった。
- 青木淳 → 空間の質が良ければ、機能はそこに順応あるいは新たな価値を付加する。
青木淳氏は、この考えを基に「空間の質は機能に先行する」状態を追求した。
多様な表情をつくるダブル・スキン

ひとつの形式によって形作られたファサードを、より一層魅力的なものにしているのが「ダブル・スキン」という2重の面を持つシステムである。
ここでは、前面をメタル・ファブリック(複雑な形状をした金網)、背面をパネルによって構成しており、それらが見る角度や距離によって表情を多様に変化させる。
さらに、このメタルファブリックとパネル自体にも数パターン存在し、この建物のファサードをより多様なものにしている。
建築概要
- 所在地:東京都渋谷区神宮
- 竣工 :2002年8月
- 用途 :物販店舗 事務所 理髪店
- 構造 :S造、SRC造
- 階数 :地下2階 地上8階 塔屋1階
- 設計 :青木淳建築計画事務所
- 構造 :佐々木睦朗構造計画研究所
- 施工 :清水建設
- URL :https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/point-of-sale/japan/louis-vuitton-tokyo-omotesando
最後に・・・
以上が、ルイ・ヴィトン表参道店の特徴でした。
機能から構成を考えるのではなく、どうな機能をも生かすことができる質のいい空間を目指して決定された形式が、魅力的な空間を作っていたと思います。
ご覧いただきありがとうございました。