ロイズ・オブ・ロンドン(ロイズビルディング)とは?
- 設計:リチャード・ロジャース
- 住所:イギリス・ロンドン
- 竣工:1986年
- 用途:オフィスビル
ロイズ・オブ・ロンドン(ロイズビルディング)は、世界的な保険組合「ロイズ」の本社ビルとして、1986年イギリスの首都ロンドンに建設されたビル建築である。
敷地は、世界屈指の金融街として知られるロンドンの中心地「シティ・オブ・ロンドン」に位置しており、街には古典的な様相を示す建築作品が数多く残されている。
その歴史的な街並みに反して、ロイズ・オブ・ロンドンのファサードは、まるで工場のように構造や設備が表出したメカニカルな外観を示している。
このメカニカルな建築を設計したのは、ハイテク建築でその名を馳せたイギリスを代表する建築家「リチャード・ロジャース」である。
ロジャースの出世作が「ポンピドゥー・センター」であるとすれば、ロイズ・オブ・ロンドンは、ポンピドゥー・センターで獲得した地位を不動のものとした、彼の代表作だと言えるだろう。
ロイズ・オブ・ロンドンの建築的特徴
世界屈指の金融街に建つビル建築
ニューヨークに次ぐ世界第2位の金融街として知られる、イギリスロンドンの中心地「シティ・オブ・ロンドン」。
そんな世界屈指の金融街の中に、一際目立つビル建築が佇んでいる。
このオフィスビルは、世界的な保険組合「ロイズ」の本社が入居していることから「ロイズ・オブ・ロンドン」と呼ばれており、金融街シティ・オブ・ロンドンのシンボル的存在として人々に親しまれている。
リチャード・ロジャースの代表作
このインパクトのある建築物を設計したのは、イギリスを代表する建築家「リチャード・ロジャース」である。
ロジャースは、1977年にフランス・パリに完成したハイテク建築「ポンピドゥー・センター」によって建築界にその名を轟かせ、その後も世界各地で前衛的な建築作品を数多く残している建築家である。
そんなロジャースの代表作であるとともに、彼がポンピドゥー・センターによって得た地位を不動のものとした作品が、今回解説している「ロイズ・オブ・ロンドン」だと言われている。
歴史地区に建つハイテク建築
シティ・オブ・ロンドンは金融街であるとともに、古典的な建築物が数多く残る「歴史地区」としても知られている。
しかし、ロイズ・オブ・ロンドンは、そんな歴史地区が作り出す重厚感のある街並みとは対照的に、まるで工場のようなハイテク建築としてロンドンの街に変化を与えている。
ハイテク建築とは、1970年代に登場した革新的な建築様式である。モダニズムが機能主義のモチーフとした「機械」という要素を、建築の意匠にまで引用するスタイルで知られている。
ハイテク建築の代表作にして最高傑作として知られるのがパリの「ポンピドゥー・センター」であり、ロイズ・オブ・ロンドンは、ポンピドゥーセンターとの共通点が随所にみられるハイテク建築となっている。
構造・設備が表出する工場のような建物
通常、建築の構造や設備といった要素は、建物の奥深くに隠され、意匠とは乖離して設計されることが多い。
上の写真の左側に移る、ガラス張りの建築などはそのいい例だろう。
しかし、リチャード・ロジャースらハイテク建築家は、そういった構造・設備をあえてファサードに表出させ、建築の意匠と一体的に設計するというスタイルを確立した。
ハイテク建築という革新的な建築物を生み出すことによって、均一化したモダニズム世界に変化をもたらそうとしたのである。
ロイズ・オブ・ロンドンでも、ファサードに階段やパイプといった要素が表出し、工場のような外観を作り出しているのがわかる。
内部に展開される大空間
構造や設備をファサードに表出させることは、内部空間に意外な効果をもたらす。
通常は内部に収めるパイプや階段などを外部に出すことによって、内部空間に余裕が生まれ、障壁のない大空間を生み出せるようになるのである。これはポンピドゥー・センターとも共通する特徴である。
外観にも引けを取らないインパクトのある内部空間となっている。