【建築特徴】関西国際空港旅客ターミナルビル|レンゾ・ピアノ

目次

関西国際空港旅客ターミナルビルとは?

関西国際空港旅客ターミナルビルは、大阪国際空港・神戸空港とともに関西三空港の一つとして知られる「関西国際空港」のターミナルビルとして、1994年に竣工した空港建築である。

建築の設計は、1970年代に登場したハイテク建築の名手「レンゾ・ピアノ」を中心とする、国際設計共同体によって実施された。

建築全体は、全長約1.7kmにも及ぶ流れるような大屋根によって覆われており、様々な機能が複雑に絡み合うターミナルビルという特殊なビルディングタイプに、ある種の一体性をもたらしている。

また、この建築では意匠・構造・設備といった要素が一体的に設計されており、ハイテク建築家として知られるレンゾ・ピアノらしい設計スタイルが顕著に表れている。

1995年には日本建築学会賞作品賞も受賞している、日本を代表する空港建築である。

関西国際空港旅客ターミナルビルの建築的特徴

関西国際空港を統括するターミナルビル建築

関西国際空港は、関西における空路の国際的な玄関口として、1994年に開港した空港施設である。

そんな関西国際空港の施設の中でも、搭乗手続きや航空保安検査、待ち合わせや食事など、現代の複雑化する空港機能を統括する役割を果たしているのが「関西国際空港旅客ターミナルビル」となる。

旅客にとって、旅の始発点・終着点となるこの建物の設計を務めたのは、イタリア出身の世界的建築家「レンゾ・ピアノ」である。

レンゾ・ピアノの代表作

photo by Columbia GSAPP/CC 表示 2.0

レンゾ・ピアノは、1970年代に登場した建築思潮「ハイテク建築」のパイオニアとして知られる建築家である。

フランスパリに建つハイテク建築「ポンピドゥー・センター」の設計者といったほうがわかりやすいだろうか。

ハイテク建築は、建築界がモダニズムからポストモダンへと変遷する最中に生まれた新たな建築様式であり、モダニズムが機能主義のモチーフとした「機械」を、ハイテク建築家たちは意匠にも適用している。

つまり、構造体や設備といった、通常は建物の奥深くに隠す機械的な要素を、建物の意匠として前面に表出したスタイルの建築のことをハイテク建築というのである。

そして、今回解説している関西国際空港旅客ターミナルビルも、そのハイテク建築的な特徴が随所にみられる。

全長1.7㎞にも及ぶ翼のような大屋根

関西国際空港旅客ターミナルビルの最大の特徴はなんといっても、全長1.7㎞にも及ぶ流動的な大屋根である。

まるで飛行機の翼のようにも見えるその大屋根は、ターミナルビルという様々な機能が入り混じるビルディングタイプにある種の一体性をもたらし、動線計画の明瞭化にも寄与している。

また、この大屋根では、意匠・構造・設備といった要素が一体的に設計されているということも見落とすことはできない。

意匠・構造・設備の一体的な設計

上の写真は、関西国際空港旅客ターミナルビルの4階部分を映したものである。

流れるような有機的な屋根形態が内部空間にも表れており、さらにその屋根を支えるトラス構造がむき出しになっていることがわかる。

また、トラス梁の間に設けられている光る膜のようなものは、実は「オープンエアダクト」というもので、屋根の端に設置される吹き出し口から送り出された風を、この膜に添わせて送風することによって、建物全体に風を行き渡らせるという役割を持っている。

また、見てわかる通りこの膜は「天井間接照明」の役割も担っている。

このように、意匠・構造・設備といった要素が一体的に設計されている点においては、レンゾ・ピアノの「ポンピドゥー・センター」ともかなり共通点の多い建築作品である。

4層吹き抜けの大空間「キャニオン」

photo by Nankou Oronain/CC 表示-継承 3.0

関西国際空港旅客ターミナルビルの中には、上の写真のような「キャニオン」と呼ばれる、4層吹き抜けの大空間も存在している。

この障害物の少ない大空間があることによって、旅客が建物の全体構成を視覚的に認識しやすくなり、ターミナルビルという機能が複雑に入り混じる施設でも迷いずらい空間を作り出している。

また、この空間では赤や青といったカラフルな配色が用いられており、これもポンピドゥー・センターとの類似点となっている。

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