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瞑想の森 市営斎場【伊東豊雄】

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photo by Yuco/CC BY-SA 2.0

瞑想の森 市営斎場とは?

photo by Yuco/CC BY-SA 2.0

瞑想の森市営斎場は、岐阜県各務原市に建つ、老朽化した旧火葬場を改築してできた施設である。

設計を務めたのは、日本を代表する建築家伊東豊雄。

敷地は南側に緑豊かな山、北側に溜池が広がる静けさを持つ立地であった。

そこで、従来の重厚な火葬場建築ではなく、空に浮かぶ雲のような屋根に覆われた、おおらかな建築をつくり出している。

たけひこ
たけひこ

そんな、瞑想の森市営斎場の特徴をご紹介します!!

伊東豊雄とは?

  • 1941 京城(現・ソウル)に生まれる
  • 1943 長野県諏訪郡下諏訪町移住
  • 1965 東京大学工学部建築学科卒業
  • 1965 菊竹清訓設計事務所勤務
  • 1971 アーバンロボット設立
  • 1979 ↑伊東豊雄建築設計事務所改称
  • 1986 日本建築学会賞作品賞受賞
  • 2013 プリツカー賞受賞

伊東豊雄は、日本を代表する建築家であり、代表作として「せんだいメディアテーク」「多摩美術大学図書館」などが知られている。

また、建築家安藤忠雄とは同年生まれであるが、安藤さんの一貫したコンクリートのスタイルとは異なり、伊東さんは特定のスタイルを持っていない。

そのため、同じ人物が設計したとは思えない、多種多様な建築作品が魅力的である。

建築の特徴

photo by Yuco/CC BY-SA 2.0

瞑想の森市営斎場の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 「瞑想の森」の中に建つ火葬場
  2. 凹凸を繰り返す有機的な屋根
  3. 屋根の形態スタディ過程
  4. 故人と遺族の別れを包み込む空間
  5. 周囲の壁と同化した扉

瞑想の森」の中に建つ火葬場

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瞑想の森は、火葬場の改築に伴い整備された公園であり、「深い森への回帰」をコンセプトに設計された。

設計を務めたのは、ランドスケープ・アーキテクトである石川幹子氏である。

周囲の自然や街並みと調和しつつ、伊東豊雄氏が手がける揺らめく屋根の建築とどのような関係性を作り出すかを熟考したいう。

その結果、故人と遺族の別れを優しく包み込み、伊東氏の建築と呼応したランドスケープが完成した。

凹凸を繰り返す有機的な屋根

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建築の最大の特徴である凹凸のある大屋根は、20cm厚の鉄筋コンクリート造でできており、その有機的な曲面は内部空間にも及んでいる。

この大屋根は、外から見ると空を流れる雲が軽やかに浮いているように見える。

一方、内からは火葬場という重苦しい空間を、やわらかく包み込むような空間に変化させ、遺族の悲しみに寄り添うような空間となっている。

屋根の形態スタディ過程

photo by Yuco/CC BY-SA 2.0

屋根の有機的な形態は、次の4つの要素を主軸として決定された。

  1. 計画的要素
  2. 構造的要素
  3. 設備的要素
  4. 意匠的要素

計画的要素

計画的要素としては、内部に入るホール、待合室、火葬設備などの用途に合わせて最適な天井高を与え、それらを連続的に繋いでいる。

さらに、正座をする和室では天井は低め、椅子に座る洋室では天井は高めにするなど、細部にまでこだわった形状となっている。

構造的要素

構造的要素としては、最適化構造手法によって自動的にベストな構造形態を探し出している。

設備的要素

設備的要素としては、凹凸の凹の部分には雨がたまってしまうという問題があった。

そのため、柱の上に位置する部分のみに凹を設け、柱の中に雨水が通るといという管を設けて水がたまらないようにしている。

意匠的要素

意匠的要素としては、前面に広がる池の対岸からの見え方、内部空間の居心地、周辺環境との関係などを考慮し、布のように滑らかな形態としている。

故人と遺族の別れを包み込む空間

photo by Yuco/CC BY-SA 2.0

瞑想の森市営斎場の内部は、故人と遺族の別れを優しく包み込むような空間構成となっている。

まず、天井面に設けられた間接照明によって、天井全体が面発光し、その光に導かれるように、参列者はひつぎと共に炉前ホールへと進む。

そして、周囲の壁と同化した扉の中にある火葬炉で故人と別れを告げる。

その後、池に沿って配置された待合室で静かな風景を眺めた後、収骨を行い、館をあとにする。

このように、儀式の流れは形式的に整然と執り行われるが、その一つ一つの過程に対して空間が寄り添うような設計がされている。

周囲の壁と同化した扉

火葬炉へと通じる扉は、周囲の壁と同化した構成となっている。

これは、火葬炉の存在感はできる限り消し去り、火葬炉の入口が並んでいる様子を遺族に感じさせないための配慮である。

建築概要

  • 所在地:岐阜県各務原市那加扇
  • 竣工 :2006年5月
  • 用途 :火葬場
  • 構造 :RC造 S造
  • 高さ :11.56m
  • 階数 :地上2階
  • 設計 :伊東豊雄建築設計事務所
  • 構造 :佐々木睦朗構造計画研究所
  • 設備 :環境エンジニアリング
  • 施工 :戸田・市川・天龍特定建設工事共同企業体

施設概要

最後に・・・

以上が瞑想の森市営斎場の特徴でした。

故人と遺族を優しく包み込むような有機的な大屋根が魅力的な建築だったと思います。

たけひこ
たけひこ

見学もできるので、是非一度瞑想の森市営斎場を訪れてみてください!!

ご覧いただきありがとうございました。

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