パウル・クレー・センターとは?
- 設計:レンゾ・ピアノ
- 住所:スイス・ベルン
- 竣工:2005年
- 用途:美術館
パウル・クレー・センターは、20世紀に活躍したスイスの画家「パウル・クレー」の作品を収蔵・展示するための施設として、2005年にスイスの首都ベルンに開館した個人美術館である。
館内には美術館機能のほかにも音楽ホールやレストラン、データベースライブラリーなど複数の機能が併設されており、複合文化施設としても機能している。
そんなパウル・クレー・センターの設計を務めたのは、イタリア出身の世界的建築家「レンゾ・ピアノ」である。
敷地はベルン郊外の丘陵地に位置しており、その敷地が持つ緩やかな傾斜と呼応するかのような3つの波形屋根が建築最大の特徴となっている。
この波形屋根はステンレス素材によって構成されており、ハイテク建築家としてのレンゾ・ピアノらしさも現れた建築作品となっている。
パウル・クレー・センターの建築的特徴
パウル・クレーの作品を取り扱う個人美術館
パウル・クレーとは、20世紀前期に活躍したスイス出身の画家である。
クレーは、表現主義やキュビスム、シュルレアリスムといった前衛芸術運動に強い影響を受けながらも、彼独自のスタイルで数多くの作品を残し、20世紀を代表する画家とまで呼ばれた前衛画家である。
そんな、パウル・クレーの残した膨大な作品のうち、約40%にあたる4000点もの作品を収蔵・展示しているのが、スイスの首都ベルンに建つパウル・クレー・センターなのである。
レンゾ・ピアノの代表作
パウル・クレー・センターの設計を務めたのは、イタリア出身の建築家「レンゾ・ピアノ」である。
レンゾ・ピアノは、1977年に竣工したハイテク建築「ポンピドゥー・センター」で一躍時の人ととなり、その後も世界各地で革新的な作品を数多く手がけている現代建築界を代表する建築家である。
ちなみに、ハイテク建築とは1970年代に登場した革新的な建築様式であり、構造や設備といった要素を表に出し、機械のようなハイテクな外観を呈した建築作品のこと指す。
ピアノはポンピドゥーセンターによってハイテク建築家として名を馳せ、その後も意匠・構造・設備・環境といった要素に優劣をつけず、それらを一体的に設計するスタイルが世界で高く評価されている。
丘と連続する、ステンレスの波形屋根
パウル・クレー・センターは、スイス・ベルンの郊外にある丘陵地に位置している。
そして、建物全体は丘の有機的な傾斜と連続する3つの波形によって構成されており、周辺の緑豊かな環境に溶け込むようなランドスケープを形成している。
一方で、その波形屋根は、ステンレスという人工的な素材感をそのまま残しており、自然と人工の対比が魅力的な外観を生み出している。
このように、構造をそのまま意匠として見せているあたりは、ハイテク建築家としてのレンゾ・ピアノらしい設計スタイルとなっている。
光を拡散する半透明パネル
パウル・クレー・センターの屋根面には、作品保護の観点からトップライトなど採光窓は基本的に設置されていない。
その代わりとして、建物のファサード部分にはルーバーのような半透明パネルが大量に設置されている。
このパネルは、もちろんルーバーとして直射日光を適度に遮るという効果もあるが、反対に、太陽光を拡散して建物内部を明るく照らし出す効果も持ち合わせている。
光であふれる大らかな内部空間
半透明パネルによって光が拡散された内部空間には、波形屋根と対応した曲面天井とも相まって、包み込むような大らかな空間が生み出されている。
また、内部ではステンレスの構造体がより純粋に表現されており、レンゾ・ピアノらしい大胆な空間構成となっている。
波間に設けられたエントランス
パウル・クレー・センターのエントランスは、波形屋根の波間をまたぐようにして設置されている。
エントランスまでは、歩道からつながるブリッジを渡るのだが、その間には左右の波形屋根の構造体を眺めつつ施設内部までアプローチすることができるようになっている。
また、エントランス内部は、両面がガラスで挟まれた回廊状の空間となっているため、訪れた人は、エントランス越しに緑豊かなスイスの街並みが望めるような動線計画になっている。