曽禰達蔵の建築作品5選【人物像・代表作などを解説】

皆さんこんにちは、本サイト「建築LIFE」を運営しているたけです。

今回は、明治期の日本建築界を、辰野金吾や片山東熊と共に牽引した建築家「曽禰達蔵」の建築作品5選をご紹介したいと思います。

三菱社の社員として、現在の丸の内オフィスビル街の原型を作り出した人物でもあります。

是非最後までご覧ください。

目次

曽禰達蔵(そねたつぞう)とは?

曽禰達蔵の経歴

  • 1952年 江戸に生まれる
  • 1879年 工部大学校造家学科卒業
  • 1879年 工部省に入る
  • 1881年 工部大学校助教授
  • 1890年 コンドルの紹介で三菱社に入社
  • 1906年 三菱定年退社、建築事務所開設
  • 1908年 曽禰中條建築事務所開設
  • 1936年 中條が逝去
  • 1937年 逝去(85歳)

曾禰達蔵(そねたつぞう)は、辰野金吾と共に工部大学校造家学科(現・東京大学建築学科)を1回生として卒業し、明治期の日本建築界を牽引した建築家である。

卒業後は、工部省に入った後、工部大学校時代の恩師でもあるコンドルの紹介で「三菱社」に入社。

三菱社では、日本で最初の街区計画といわれる東京・丸の内の大規模開発を担当し、オフィスビル街として有名な丸の内の街並みの原型を作り出した。

三菱を定年退職した後は、中條精一郎とともに「曽禰中條建築事務所」を開設し、邸宅・ビル・図書館など、多種多様な建築作品を手がけている。

代表作には、重要文化財に指定されている「慶應義塾図書館旧館」や「旧三井銀行小樽支店」などがあげられる。

また、曽禰達蔵は、明治期に数多くの歴史主義建築を手掛けながらも、晩年には新しく西欧から入ってきたモダニズムすらも自らの設計に取り入れ、常に時代の最先端を走った人物としても知られている。

曽禰達蔵の建築作品5選

1.占勝閣

photo by Indiana jo/CC 表示-継承 4.0
  • 設計:曽禰達蔵
  • 住所:長崎県長崎市
  • 竣工:1904年
  • 用途:邸宅・迎賓館
  • URL:公式ページ

占勝閣(せんしょうかく)は、1904年に長崎造船所長の邸宅として建てら、迎賓館として長年使用されている、木造2階建ての洋風建築である。

2015年には「明治日本の産業革命遺産」を構成する23資産のひとつとして、世界遺産にも登録されている歴史的価値の高い建築物だ。

建築としては、尖塔やベランダ、白壁などが印象的な洋風建築となっており、迎賓館にふさわしい威厳のある佇まいをしている。

占勝閣は木造建築ながら、竣工から120年近く経った現在でも迎賓館として現役で稼働しており、祝賀会や貴賓の接待等に使用されているという。(非公開)

2.慶応義塾図書館旧館

photo by Kakidai/CC 表示-継承 4.0
  • 設計:曽禰達蔵
  • 住所:東京都港区三田2-15-45
  • 竣工:1912年
  • 用途:図書館(現・展示館)
  • URL:公式ページ

慶応義塾図書館旧館は、慶應義塾の創立50年を記念し「慶応義塾創立五十年記念図書館」として1912年に建設された図書館建築である。

現在は、福沢諭吉と慶應義塾に関する史料を展示する「福澤諭吉記念 慶應義塾史展示館」として運営されている。

建築全体は、赤煉瓦の壁に白い石が帯状に配された構成が特徴的となっているが、これはイギリス独自の建築様式である「クイーンアン様式」を用いたデザインだ。

クイーンアン様式は、辰野金吾が東京駅などに用いた様式として有名だが、曽禰達蔵はそのクイーンアン様式をゴシック様式と組み合わせる形で引用している。

2階の窓の尖塔アーチや、天まで伸びるかのような背の高い八角塔などには、垂直性を重視するゴシック建築の特徴が顕著に現れている。

3.東京海上ビルディング旧館 ※現存せず

  • 設計:曽禰達蔵
  • 住所:東京都千代田区丸の内
  • 竣工:1918年
  • 用途:事務所
  • URL:参考ページ

東京海上ビルディング旧館は、1918年に東京丸の内に建てられた、7階建てのオフィスビル建築である。

日本で初めて「ビルディング」という言葉が名称に用いられた建築として知られており、オフィスビル建築界における先駆け的作品にもなっている。

構造設計には、安田講堂など数多くの東大建築を手がけた建築家として知られる「内田祥三」が加わり、当時最先端の技術を導入して本建築は建設された。

そのため、1923年に発生した関東大震災においてもほとんど被害を受けず、力強く佇んでいたという。

残念ながら、この旧館は1966年に解体されてしまったが、その跡地には新しく、前川國男による「東京海上ビルディング本館」が建設され、長い間丸の内のランドマークとしての役割を果たしていた。

この本館も現在は取り壊され、2028年には、レンゾ・ピアノと三菱地所設計による新社屋が建設される予定となっている。

4.旧三井銀行小樽支店

photo by 663highland/CC 表示-継承 4.0
  • 設計:曽禰達蔵
  • 住所:北海道小樽市色内1-3-10
  • 竣工:1927年
  • 用途:銀行(現・美術館)
  • URL:公式ページ

旧三井銀行小樽支店は、1927年に三井銀行の小樽支店として建設された銀行建築である。

建築としては、イタリア・ルネサンス様式のパラッツォ(邸宅や宮殿)形式を引用した洋風建築となっており、大きなコーニス(軒)や、シンメトリーの格式高い構成などが特徴となっている。

本施設は、帝国銀行小樽支店や三井住友銀行小樽支店など、名前を変えながらも、長い間銀行施設として利用されていたが、2017年からは「小樽芸術村」の一員に加わり、歴史のある建築物として一般公開されている。

そして、2022年には国の重要文化財にも指定された。

5.慶應義塾幼稚舎

  • 設計:曽禰達蔵・谷口吉郎
  • 住所:東京都渋谷区恵比寿
  • 竣工:1937年
  • 用途:私立小学校
  • URL:参考ページ

慶應義塾幼稚舎は、曾禰達蔵が最晩年に手がけた建築作品である。

設計は、当時先鋭建築家であった日本モダニズムの先駆者「谷口吉郎」との共同で行っており、曽禰が数多く手がけてきた歴史主義建築ではなく、モダニズム建築のデザインが採用されている。

明治最初期に西洋建築を学び、日本の近代化に貢献した建築家の中で、モダニズムにまで手を伸ばした建築家はおそらく曾禰達蔵だけである。

そんな慶応義塾幼稚舎は、モダニズム初期の名建築として、DOCOMOMO JAPAN選定の「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選出されている。

参考サイト・書籍

本記事は、上記のサイトや書籍を参照して執筆しました。

今回はこれで以上になります。最後までご覧いただきありがとうございました。

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