ポーラ美術館とは?

ポーラ美術館は、箱根の森の中に溶け込むように存在する美術館である。
設計を務めたのは、日本の大手組織設計事務所「日建設計」。
「箱根の自然と美術の共生」
このコンセプトを基に、周辺の緑豊かな自然環境に最大限に配慮しつつ、その自然と共生した美術館が完成している。
日建設計とは?
日建設計は、建築の設計・監理・都市デザインなどの業務を中心に活動する会社である。
日建設計の代表作としては、「NHKホール」「東京スカイツリー」「東京ドーム」などが挙げられ、その規模の大きさがうかがえる。
そんな中、ポーラ美術館でチーフを務めたのは当時若手だった「安田幸一」。
のちに個人設計事務所を立ち上げ、現在は事務所を運営する傍ら東京工業大学建築学専攻の教授も務めている。
建築の特徴

ポーラ美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 箱根の森に溶け込む建築
- 鉢型の孔に埋まる美術館
- 十字型の平面計画
- 魅力的な空間演出
- 多様な表情をつくる「光壁」
箱根の森に溶け込む建築

ポーラ美術館は、周囲の自然環境を極力破壊しないために、動植物や地形・水流などを綿密に調査し、最も自然への影響が小さい場所に美術館を建設している。
さらに、森の景観を壊さないために地上部の高さを8m以下に抑え、建物の大部分を地下に埋め込んでいる。
これらの自然環境に対する配慮によって、コンセプトの「自然と美術の共生」を実現している。
鉢型の孔に埋まる美術館

建物の大部分が埋まる穴は、直径72mの鉢型に掘られている。
この鉢型は、土圧に対して最も有効的な形状であり、さらに地下水流を分断しないという点でもこの地形に適した形状であることがわかる。
また、建物には完全免震構造が採用されているため、地震による人や美術への被害を最小限に抑えることができる。
十字型の平面計画

photo by Yuya Tamai/CC BY 2.0
ポーラ美術館の全体像は、模型写真のように鉢型の穴に十字型の建物が埋まった構成となっている。
中心部分には地下2階まで吹き抜けるロビーが存在し、その周りに展示室や諸室を配置。
さらに、十字型によってできた四隅のスペースは、外部に直接避難できるデッキや設備スペースとして有効活用されている。
魅力的な空間演出


ポーラ美術館の最大の魅力はその空間演出である。
最初、観光客は細いブリッジを渡りエントランスにアプローチし、玄関を入るとトップライトが奥まで伸びたエスカレータのある空間に出る。
自然を存分に感じながらエスカレータを降りると、地下なのに光が落ちる大きな吹き抜けのロビー空間に到着する。
このような光と空間のシークエンスこそがポーラ美術館の代名詞にもなっている。
多様な表情をつくる「光壁」

南側には高さ20mにも及ぶ「光壁」が存在する。
この光壁は、太陽の一日の動き、陽の差し方によってさまざまに表情を変化させ、内部空間に多様性をもたらしている。
さらに、夜になると壁に内蔵された光のチューブが点灯し、上の写真のように光の柱を作り出す。
建築概要
- 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町
- 竣工 :2002年5月
- 用途 :美術館
- 構造 :S造、SRC造
- 階数 :地上2階 地下3階
- 設計 :日建設計
- 施工 :竹中工務店
- 構造 :日建設計
- 設備 :日建設計
- URL :https://www.polamuseum.or.jp/
最後に・・・
以上がポーラ美術館の特徴でした。
箱根の豊かな自然環境に最大限に配慮しつつ、その緑と光をうまく利用した内部空間の演出が魅力的な建築になっていたと思います。
是非一度、ポーラ美術館を訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。