【建築紹介42】金沢駅東口広場:白江龍三

目次

金沢駅東口広場とは?

金沢駅東口広場は、石川県金沢市にある日本で最も美しいと言われる駅前広場のことである。

実際に金沢駅は、アメリカの旅行雑誌「トラベル&レジャー」で世界で最も美しい駅14選に、日本で唯一選出された。(6位)

世界で最も美しい駅ランキングTOP6
  1. アントワープ中央駅 (ベルギー)
  2. セント・パンクラス駅 (イギリス)
  3. CFMマプト中央駅 (モザンビーク)
  4. シルケジ駅 (トルコ)
  5. サザンクロス駅 (オーストラリア)
  6. 金沢駅 (日本)

金沢駅の設計を務めたのは建築家白江龍三であり、次のことをコンセプトとして設計を行ったという。

設計コンセプト「駅を降りた人に傘を差しだすおもてなしの心」

建築としては、つづみをモチーフとした「鼓門つづみもん」とガラス張りによる「もてなしドーム」の対比が魅力的である。

白江龍三とは?

  • 1952 埼玉県に生まれる
  • 1976 日本大学理工学部卒業
  • 1978 同大学大学院修了
  • 1978 菅原建築事務所勤務
  • 1979 日本設計勤務
  • 1988 白江建築研究所設立

白江龍三とは、日本大学理工学部建築学科で建築を学び、個人事務所や日本設計などに就職した後、自身の建築事務所を持ち活動している建築家である。

代表作としては、やはり金沢駅が有名であるが、日本設計時代に担当した「多摩動物公園昆虫生態園」では日本建築学会作品賞を受賞している。

建築の特徴

金沢駅の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 能楽で使われる鼓をイメージした「鼓門」
  2. このような構成になった経緯
  3. 「鼓門」の構造システム
  4. 雪や雨を受ける「鼓門」
  5. 夜になるとライトアップする「鼓門」
  6. 大きな傘をイメージした「もてなしドーム」
  7. 「もてなしドーム」の平面構成
  8. 「もてなしドーム」の構造
  9. 400年を見越した建築

能楽で使われるつづみをイメージした「鼓門」

金沢駅最大の特徴である木の構造が魅力的な「鼓門つづみもん」は、名前からもわかるように「鼓」をイメージしている。

鼓(つづみ)とは?

鼓とは、日本の伝統芸能である能楽で使用される楽器のことである

金沢は能楽が盛んな都市であるため、その要素を金沢の顔となる金沢駅に用いた。

このような構成になった経緯

ガラスと金属

もともと、金沢駅東口広場の設計案は、ガラスと金属によるシンプルなものであったそう。

しかし、概要が大まかに決まり、その報告会を行ったところ次のような意見が挙がった。

木造や瓦のように直接歴史を感じられる空間にしたい

設計者の白江龍三氏は、木造の門を作ることでこのような要望に応えようと考えた。

「鼓門」の構造システム

「鼓門」の構造は、垂直荷重を支える鉄骨造と、地震などの水平力を支える木造によるハイブリット構造となっている。

一見木造だけに見えますが、2本の螺旋状柱の内には太い鉄骨の柱が立っています。

さらに、斜めの柱がいくつも重なり螺旋を形成している木造の柱は、あらゆる方向からの地震力に対応しつつ、美しい「鼓」のような外観を作り出している。

雪や雨を受ける「鼓門」

さらに「鼓門」は、雨や雪の多い金沢市で傘のような役割も果たしている。

上の写真を見ると、後ほど紹介する「もてなしドーム」が背後にそびえたち、その屋根の先端がカーブして「鼓門」の屋根に結合している。

これは、「もてなしドーム」からの危険な落雪を「鼓門」の屋根で受け止めることで、人々を守っている。

このような視点で見ると「鼓門」が、雪を受け止めるための器のようにも見えてきますね!!

さらに、2本の大きな柱の中には送水管が通っており、「鼓門」の屋根に溜まった雨水を貯水槽に送ることができる。

夜になるとライトアップする「鼓門」

古代紫色にライトアップされた「鼓門」

「鼓門」は日没から0:00分までライトアップされる。

それも、加賀五彩をイメージした光によって曜日ごとに異なる外観を作り出す。

加賀五彩とは?

加賀五彩とは、加賀友禅(石川県金沢市周辺で作られている着物)に用いられる5つの色彩のことである。

  1. 臙脂(えんじ)色
  2. 藍(あい)色
  3. 草色
  4. 黄土色
  5. 古代紫(こだいむらさき)色

上の色順で月曜から金曜までライトアップされ、土日祝日は5色すべてが時間に分けてライトアップされる。

大きな傘をイメージした「もてなしドーム」

「もてなしドーム」は金沢駅から出てきた人たちに傘をさすように、大きなガラス屋根によって覆われている。

金沢駅は「鼓門」が注目されがちですが、この光のあふれる圧倒的大空間も魅力的です!!

「もてなしドーム」の平面構成

平面概略図

上の図を見てもらうと、金沢駅から出ると最初に「もてなしドーム」を通り、そのあと「鼓門」をくぐり抜けて金沢市に出ていくような構成になっている。

さらに、「もてなしドーム」は「鼓門」に向けてカーブを描きながら先細りしていき、その両側に駐車場やバス停留所などの広場を設けている。

この明瞭な動線計画も金沢駅の魅力の一つです!!

「もてなしドーム」の構造

柱から広がるアルミトラス構造

「もてなしドーム」の構造は、24本の鉄骨鉄筋コンクリート造の柱の先端に鉄製のピンがあり、そこからアルミ製のトラス構造が広がっていく。

さらに、大空間を作り出すアルミ製のフレームは、ケーブルによって補強され、その外側を強化ガラスが覆っている。

使用された強化ガラスは3,019枚、アルミフレームは約6000本にも及ぶ。

400年を見越した建築

「もてなしドーム」にアルミを用いたのには明確な理由がある。

金沢の400年

金沢の文化の多くは、約400年前に行われた城下町の都市づくりを基点に始まっている。

このことを考慮し、これからの400年を代表するような建築物をつくろうということで建てられたのが金沢駅東口広場である。

400年は大げさかもしれないが、できるだけ金沢駅が長持ちするようにと考え、耐久性のあるアルミ合金が採用された。

また、アルミ以外にも、個々の部品が老朽化しても簡単に交換できるような仕組みづくりをするなど、長寿命化の工夫が多くなされている。

建築物概要

  • 所在地:石川県金沢市堀川町
  • 竣工 :2005年3月
  • 用途 :駅前広場
  • 構造 :SRC造 S造 アルミ構造
  • 階数 :地下1階
  • 設計 :白江建築研究所+トデック
  • 施工 :清水建設株式会社など
  • 構造 :計画プラスワン
  • 設備 :明野設備研究所

施設概要

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