犬島精練所美術館とは?

犬島精練所美術館は、瀬戸内海に浮かぶ岡山市唯一の有人島「犬島」内に建つ美術館である。
設計を務めたのは、瀬戸内を中心に活動する建築家「三分一博志」。
コンセプト「在るものを活かし、無いものを創る」
このコンセプトを基に、100年以上前に建てられた銅精錬所の遺構を保存・再生しながら、犬島の活性化計画「犬島アートプロジェクト」の中心となる美術館が2008年に完成した。
三分一博志とは?
- 1968 山口県に生まれる
- 1992 東京理科大学建築学科卒業
- 1992 小川晋一アトリエ勤務
- 1997 三分一博志建築設計事務所設立
三分一博志は、瀬戸内・広島を中心に活躍する建築家である。
代表作としては、「犬島精練所美術館」「直島ホール」「おりづるタワー」などが挙げられる。
また、三分一博志は「建築が地球の一部になること」という一貫したテーマを基に建物を設計することで知られており、自然環境を考慮した構成が魅力的でもある。
建築の特徴

犬島精練所美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 「近代化産業遺産」に認定された精錬所跡
- 空調設備に頼らない環境コントロール
- 自然光を内部に取り込む鏡
- 既存資材の利用
- 建築と一体になったアート作品
「近代化産業遺産」に認定された精錬所跡

1909年、原料輸送の利便性などから「犬島」に建設された銅精錬所であったが、銅価格大暴落などの影響を受け、10年後の1919年に操業を終了。
その後、残された精錬所は小さな島の中で人間の影響を受けずに放置されてきたため、工場跡や煙突といった精錬所を彷彿とさせる遺構がいい状態で保存されていた。
そんな中、日本の産業発展に莫大な影響をもたらした遺構として2007年に「近代化産業遺産」としてこの精錬所跡が認定された。
このことをきっかけに、2008年には地域活性化を目的とした「犬島アートプロジェク」の一環として精錬所跡を生かした美術館が建設されることとなる。
空調設備に頼らない環境コントロール

精練所美術館最大の特徴は、以下に挙げるような既存の建築物や環境を生かした、空調設備を用いない環境コントロールである。
- 「地中熱」の効率的活用
- 既存の煙突による空気の循環
- 太陽エネルギーの活用
さらに、地中熱を効率的に活用するために、壁には熱伝導率の優れた鉄壁を使用するなどの環境に配慮した工夫が多々見られる。
自然光を内部に取り込む鏡
この美術館の環境コントロールにおいては、採光にも工夫が見られる。
外からの自然光を極力内部に取り込むために、地中回廊の曲がり角に大きな鏡を設置し、その反射で内部空間を明るく照らしている。
さらにこの鏡は、内部を照らすだけではなく、回廊が一直線に奥まで続いているかのように見せる効果があり、アート作品の一つにもなっている。
既存資材の利用

この美術館を構成する材料は、その多くがこの島に存在する既存資材である。
例えば、島を構成する「花崗岩」や銅精錬時の副産物であるスラグを固めて作った「カラミ煉瓦」などが美術館の壁などに有効的に利用されている。
特に、「カラミ煉瓦」は海やその周辺に廃棄されていたものを再生利用したもので、環境に対して徹底的に配慮していることがわかる。
建築と一体になったアート作品
犬島精練所美術館のアート作品は、建築と協働してつくられているのが最大の特徴である。
現代美術作家である「柳幸典」が手がけた、6点からなる建築協働のアート作品『ヒーロー乾電池』。
これらの作品も、犬島からとれる花崗岩やスラグなどの地場的なものを材料として利用している。
建築概要
- 所在地:岡山県岡山市犬島
- 竣工 :2008年3月
- 用途 :美術館
- 構造 :W造 S造
- 階数 :地上1階
- 設計 :三分一博志建築設計事務所
- 施工 :建築大本組
- 構造 :ARUP JAPAN
- 環境 :ARUP JAPAN
- URL :https://benesse-artsite.jp/art/seirensho.html
最後に・・・
以上が犬島精練所美術館の特徴でした。
100年以上前から残る遺跡を保存しながらも、その特徴や性質をうまく利用して自然環境に配慮した、魅力的な美術館になっていたと思います。
是非一度、犬島精練所美術館を訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。