アクロス福岡とは?

アクロス福岡は、コンサートホールや国際会議場を始めとする公共施設と、ショップやレストランなどの民間施設が複合された「公民複合施設」である。
竣工は1995年。旧福岡県庁舎の跡地を利用する形で建設された。
斜めに切断されたような階段上の大屋根と、その大屋根を覆う空中庭園が特徴的。
アクロス福岡の南側には、緑豊かな天神中央公園が存在し、天神公園とアクロス福岡の緑が混じり合い、高層ビルが立ち並ぶ都市に豊かな空間を作り出している。
設計者は?
基本構想は以下の三者が共同で行われている。
・エミリオ・アンバース
・日本設計
・竹中工務店
基本設計・実施設計に関しては、日本設計と竹中工務店が担当した。
エミリオ・アンバースは、アルゼンチン出身の建築家で、現在増えている『緑と共生する建築』という構想をいち早く提唱した先駆者としても知られる。
建築の特徴




アクロス福岡の建築的特徴としては、以下のような点が挙げられる。
- 公民複合施設
- 天神中央公園から連続する空中庭園
- 階段状にセットバックする大屋根
- 別名『アクロス山』と呼ばれる空中庭園
- アクロス山を貫通する『半月型のアトリウム空間』
公民複合施設




アクロス福岡は、コンサートホールや国際会議場といった県が「公共施設」と、レストランやショップなどの民間企業が管理する「民間施設」が複合された『公民複合施設』となっています。
県が運営する「ホール」や「国際会議場」だけではどうしてもお堅い施設になってしまい、街の活気を最大限に上げることはできない。
そこでこの建築の構想者は、「民間施設を複合させることでより活気のある施設にしよう!」と企てたのだろう。
天神中央公園から連続する大自然




日本はとにかく公園やオープンスペースが少ない。
- ロンドン 30.4㎡
- 福岡 3.8㎡
- 東京 1.7㎡
↑これは、人口ひとりあたりの都市公園面積である。
つまり、どれだけ都市における公園の面積が広いかを表した数値である。
世界に比べ、明らかに日本の年の都市公園面積が小さいことがお分かりいただけるだろう。
日本の敷地が狭いので公園が少ないのは仕方ないのかもしれないが、それでももう少し公園やオープンスペースは増やして、魅力的な街並みを作っていくべきだ。
このように考えたアクロス福岡の設計者は、元々整備されていた敷地前面の天神中央公園の緑を連続させるように、屋上全体を緑で埋め尽くす、空中庭園を作り出した。
しかし、ただ高いビルの上に空中庭園を設けたところで、それはラピュタと一緒で、ほとんどだれも到達できない孤立した庭園になってしまう。
そこで設計者は、なんと屋根全体を斜めに切断してしまった。
階段状にセットバックする大屋根




ご覧の通り、アクロス福岡の大屋根は、まるで侍に切り裂かれたように斜めの線が入っており、そこが階段状にならされ、その上に庭園が造られている。
つまり「ステップガーデン」になっているというわけである。
この操作によって、手が届かぬはずだった空中庭園が人々のレベルまでグッと引き下ろされる。
つまり、我々とラピュタ(空中庭園)の距離が縮まっているわけである。
屋根を階段状にするという一見シンプルな案ではあるが、そのシンプルな操作をこの規模でやられると、言葉が出ない。
別名『アクロス山』と呼ばれる空中庭園




アクロス福岡のその山のような外観から、空中庭園は別名『アクロス山』とも呼ばれている。
「で、その空中庭園は登れるの?」
もちろん、この空中庭園は誰でも登ることができる。
しかも、土日祝日になると屋上展望台も開園され、福岡の景色を一望できる。
アクロス福岡を訪れたら、ぜひ『アクロス山』登頂にチャレンジしていただきたい。
アクロス山を貫通する『半月型のアトリウム空間』
↓アトリウム外観




↓アトリウム内観




1枚目の写真を見ると、階段状の空中庭園を貫くようにガラスの筒のような空間が貫かれているのがわかる。
アクロス福岡はそのダイナミックな外観に目を引かれてしまうが、実は内部空間もかなり魅力的。
その象徴となるのが、建物中央に縦に貫入するアトリウム空間である。
この空間は上から見ると半円上の平面となっており、さらに建物外観を見るとまるでアクロス山を貫くようにして設置されている。
この大胆なアトリウム空間によって、建物内部に自然光を存分に取り込みつつ、アクロス福岡のあらゆる空間につながりをもたらす。
建築概要
- 所在地:福岡県福岡市
- 竣工 :1995年3月
- 用途 :副業施設
- 構造 :S造 RC造 SRC造
- 階数 :地下1階 地上14階
- 設計 :エミリオ・アンバース・日本設計・竹中工務店
- 施工 :竹中・鹿島・清水・九州・高松・戸田共同企業体
- 構造 :竹中・日本設計
- 設備 :竹中・日本設計
- URL :https://www.acros.or.jp/
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