長野宇平治の建築作品5選【人物像・代表作などを解説】

皆さんこんにちは、本サイト「建築LIFE」を運営しているたけです。

今回は、辰野金吾の弟子のひとりとして知られる建築家「長野宇平治」の建築作品5選をご紹介したいと思います。

日本近代建築界の第一人者として知られる人物です。

是非最後までご覧ください。

目次

長野宇平治(ながのうへいじ)とは?

長野宇平治の経歴

  • 1867年 新潟県に生まれる
  • 1893年 帝国大学造家学科卒業
  • 1893年 横浜税関嘱託
  • 1894年 奈良県嘱託
  • 1897年 日本銀行技師
  • 1900年 日本銀行大阪支店臨時建築部技師長
  • 1912年 台湾総督府嘱託
  • 1913年 長野建築事務所設立
  • 1927年 日本銀行本店増築臨時建築部技師長
  • 1937年 逝去(70歳)

長野宇平治は、日本近代建築の父と呼ばれる建築家・辰野金吾の弟子として知られる、明治から大正期にかけて活躍した建築家である。

帝国大学造家学科卒業後、長年に渡り日本銀行の技師として勤務し、数多くの銀行建築を手がけたことで知られている。

代表作には「日本銀行岡山支店」や「三井銀行下関支店」といった、ギリシャ様式やルネサンス様式を引用した古典主義建築が挙げられ、日本近代建築の先駆者として知られている。

一方で、他ではほとんど引用されてこなかったギリシャ以前の様式を用いた「大倉精神文化研究所」など、前例のない建築作品を手がけたことから、異端の建築家としても知られている。

長野宇平治の建築作品5選

1.日本銀行岡山支店(現・ルネスホール)

photo by Shouhei Sato 000/CC 表示-継承 4.0
  • 設計:長野宇平治
  • 住所:岡山県岡山市北区内山下
  • 竣工:1922年
  • 用途:銀行(現・多目的ホール)
  • URL:公式ページ

日本銀行岡山支店は、1922年に日本銀行の岡山支店として、岡山市に建設された銀行建築である。

正面ファサードを印象付ける、4本のコリント式の独立柱と、その上に乗っかる三角形ペディメントによって、古代ギリシャ建築を彷彿とさせる重厚感のある佇まいを作り出している。

外装には花崗岩を用いて重厚感を強調。
構造は基本的に、煉瓦造と石造りで構成されているのだが、小屋組み部分だけは鉄骨造が採用されている。

古典主義建築の第一人者として知られる長野宇平治のエッセンスを詰め込んだ建築作品である。

2005年には大規模な改修工事が行われ、現在この施設は、講演会や展示会などを開催できる文化施設「ルネスホール」として運営されている。

2.三井銀行下関支店(現・やまぎん史料館)

photo by なしはな/CC 表示-継承 4.0
  • 設計:長野宇平治
  • 住所:山口県下関市観音崎町
  • 竣工:1920年
  • 用途:銀行(現・史料館)
  • URL:公式ページ

三井銀行下関支店は、1920年に三井銀行の下関支店として、山口県下関市に建てられた銀行建築である。

1933年からは百十銀行本店、1944年からは山口銀行本店、1969年からは山口銀行別館として使用された後、2004年に大規模な復原・耐震補強工事を経て、2008年からは山口銀行に関する史料などを展示する「やまぎん史料館」として運営されている。

建築としては、シンメトリー性や端正さを重視するルネサンス様式が用いられており、正面ファサードに配置されたコンポジット式の柱頭を持つピラスター(装飾としての柱)によって、インパクトのある外観が形成されている。

2005年には、山口県指定有形文化財に指定されている、歴史的価値の高い建築作品である。

3.三井銀行広島支店(現・広島アンデルセン)

  • 設計:長野宇平治
  • 住所:広島県広島市中区本通
  • 竣工:1925年
  • 用途:銀行(現・店舗)
  • URL:公式ページ

三井銀行広島支店は、1925年に三井銀行の広島支店として、広島市中区本通に建設された銀行建築である。

1945年の第二次世界大戦では、広島の爆心地から360mの位置に建っていたにもかかわらず全壊を免れたことから、戦後は復興のシンボルとして、増改築を繰り返しながら維持されてきた貴重な建築物でもある。

2020年には老朽化などの問題から維持は断念され、建て替えが行われてしまったが、建物のファサードは竣工当時の状態を一部復原しており、復興のシンボルとして今もなお広島市に佇んでいる。

建築様式としては、長野お得意のルネサンス様式を用いた古典主義建築となっており、その象徴であるファサードの列柱は、現在2階部分のみが復原されている。

4.大倉精神文化研究所本館(現・横浜市大倉山記念館)

photo by Wiiii/CC 表示-継承 3.0
  • 設計:長野宇平治
  • 住所:神奈川県横浜市港北区大倉山
  • 竣工:1932年
  • 用途:研究所(現・記念館)
  • URL:公式ページ

大倉精神文化研究所本館は、実業家・大倉邦彦によって創立された「大倉精神文化研究所」の本館として1932年に建設された研究所施設である。

1981年に横浜市に寄贈されたのち、1984年からは音楽会や展覧会を行う文化施設「横浜市大倉山記念館」として運営されている。

長野宇平治はこれまで、ギリシャ様式やルネサンス様式を用いた古典主義建築は数多く手がけてきたのだが、この建築ではギリシャ以前の建築様式「プレ・ヘレニック様式(現クレタ・ミケーネ様式)」という様式を用いている。

正面玄関に配置されている列柱を見ると、下部に行くほど柱が細くなっていることがわかるが、これはクレタ・ミケーネ様式の特徴だという。

日本ではもちろんのこと、本場西洋でもギリシャ以前の様式を用いる建築家はほとんど存在しない。

そのため、長野宇平治はこの建築をきっかけに、建築界の異端児と言われるようになるのである。

5.日本銀行本店2号館・3号館 

photo by Wiiii/CC 表示-継承 3.0
  • 設計:長野宇平治
  • 住所:東京都中央区日本橋本石町
  • 竣工:1938年
  • 用途:銀行
  • URL:公式ページ

東京・日本橋にある日本銀行本店は、本館・2号館・3号館・新館・分館の5つの棟で構成されている。

その中でも、1986年に建てられた本館は、辰野金吾が設計し、国の重要文化財にも登録されているため有名であるが、実は2号館・3号館の設計は長野宇平治が行っている。

2号館・3号館は辰野金吾による本館との調和が徹底して図られており、バロック様式にルネサンス様式を加味した歴史主義建築の様態を示している。

一方で、本館は石造り+煉瓦造でできていたのに対して、2号館・3号館は、当時としては最先端の技術であった鉄骨鉄筋コンクリート造を用いている。

長野宇平氏は、3号館の竣工を迎える直前の1937年に亡くなっているため、この日本銀行本店2号館・3号館は、彼の遺作になる。

参照サイト・書籍

本記事は、下記の書籍やサイトを参照して執筆しました。

今回はこれで以上になります。最後までご覧いただきありがとうございました。

  • URLをコピーしました!
目次