内井昭蔵(うちいしょうぞう)とは?
- 1933 東京府東京市に生まれる
- 1956 早稲田大学理工学部建築学科卒業
- 1958 早稲田大学大学院修士課程修了
- 1958 菊竹清訓建築設計事務所
- 1967 内井昭蔵建築設計事務所設立
- 2002 死去(69歳)
内井昭蔵は、昭和末期~平成初期にかけて、数多くの公共建築を設計したことで知られる、日本を代表する建築家である。
代表作としては「世田谷美術館」「大分市美術館」「高岡市美術館」などが挙げられ、美術館建築の名手としても知られている。
また、内井昭三は設計活動において「健康な建築」というテーマを一貫して追求しており、人間が身体的・精神的に健康であることがベストであるように、「健康な建築とはどのようなものなのか」という事を生涯をかけて模索した建築家としても知られる。
今回は、そんな日本を代表する建築家「内井昭蔵」の建築作品7選をご紹介したいと思います。
【代表作】建築家内井昭蔵の建築作品7選
1.世田谷美術館





- 住所:東京都世田谷区砧公園1-2
- 竣工:1985年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
世田谷美術館は、東京都世田谷区「砧公園」の一角に建つ、区立美術館である。
公園の中に建つ美術館かつ、区立美術館という2つの条件を考慮し、内井昭蔵は「公園美術館」「生活空間化」「オープン化」という3つのコンセプトを掲げ世田谷美術館を設計した。
「公園美術館」というコンセプトに対しては、建物の高さを極力抑え、建物を細かく分割し、分割した建物を回遊的な回廊でつなぐという構成を採用することで、公園との調和を図っている。
「生活空間化」に関しては、展示空間を「リビング的な空間」とするため、住宅的な寸法を用いたり、内装のテクスチャを親しみやすい材料にするなどの工夫がなされている。
「オープン化」に対しては、ガラス面を多くするといったオープン化ではなく、中庭やサンクンガーデンといった要素を美術館に付加することで、内部と外部の境界の不明瞭化を図っている。
2.浦添市美術館




- 住所:沖縄県浦添市仲間1,330
- 竣工:1990年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
浦添美術館は、日本初の「漆芸専門美術館」として沖縄県浦添市に建設された公立美術館である。
琉球漆器を中心として、絵画や焼物など、延べ2000点に及ぶ美術作品を収蔵しており、工芸教室などのイベントも年に数回行われている。
施設全体としては、8つの「八角形のドーム屋根を持つ小塔」と、1つの「八景型のドーム屋根を持つ大塔」の計9つの塔が中庭を囲うように配置されており、大塔にはメインホール、小塔には展示室という機能が付加されている。
さらにこの施設は、9つの塔と中庭の間に「回廊」がぐるぐると巡らされており、シークエンシャルな回遊体験ができるのも魅力の一つだ。
3.大分市美術館




- 住所:大分県大分市大字上野865
- 竣工:1998年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
大分市美術館は、大分市にゆかりのある画家などの作品を中心に、保存・展示当を行うために設置された、緑豊かな「上野丘子どものもり公園」内に建つ公立美術館である。
施設全体としては「常設展示棟」と「企画展示棟」の2つの棟に分けられているが、それぞれの棟自体も複数の棟が集まって構成されたかのような、多様な形態・構成をしている。
また、内井昭蔵は周辺環境を組み込んだ設計をすることで知られる建築家であるが、この施設でも建物の間に「中庭」「テラス」「広場」など、あらゆる屋外空間を配置しており、回遊的な魅力的な空間が構成されている。
4.高岡市美術館




- 住所:富山県高岡市中川1-1-30
- 竣工:1993年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
高岡市美術館は、富山県高岡市にある古城公園沿いに建設された公立美術館である。
高岡伝統の金工・漆芸の作品を中心に、様々な美術作品や工芸作品の収集・展示を行いつつ、積極的に美術家や研究者による講演を行うなど、幅広い活動を行っている美術館だ。
建築としては、円形平面を持った「アートホール」を中心に建物が展開されており、さらに前面広場と高岡市美術館の間には「パティオ」と呼ばれる、地下に設置された中庭空間が広がっている。
また、高岡市美術館のすぐそばには、同じく内井昭蔵が設計を務めた「青井記念館」が建設されており、高岡市美術館と青井記念館をつなぐようにして、ジグザグと折れ曲がる「アルミキャスト屋根」に覆われた回廊空間がつくられている。
5.蕗谷虹児記念館




- 住所:新潟県新発田市中央町4-245-1
- 竣工:1987年
- 用途:記念館
- URL:公式ページ
蕗谷虹児記念館は、新潟県新発田出身の挿絵画家・蕗谷虹児(ふきやこうじ)の顕彰を目的として1987年に建設された施設である。
蕗谷虹児は、新聞連載小説の挿絵や『いっすんぼうし』『人魚姫』といった絵本の挿絵などを数多く手がけており、この記念館では、そういった蕗谷虹児作品の原画や遺品などを展示している。
そして、内井昭蔵はこの記念館を「蕗谷虹児の姿をした建築にしたい」と考えて設計の臨んだ。
具体的には、蕗谷虹児という人物、そして彼の作品に「トワイライトゾーン(不可思議な事象や超常現象などの怪異が起こる時間)」的なものを内井昭蔵は感じ取り、そのイメージを表すには「ロシア正教会」の形態を用いるしかないと考えたそう。
この思想に基づいて設計された記念館は、まさしくロシア正教会建築を思わせる、荘厳な作りになっている。
6.新発田市民文化会館・公民館




- 住所:新潟県新発田市中央町4-11-7
- 竣工:1980年
- 用途:文化会館+公民館
- URL:公式ページ
新発田市民文化会館・公民館は「916人収容の大ホール」「練習室」「会議室」などの機能からなる、新潟県新発田市に建つ文化芸術の拠点施設である。
内井昭蔵は、この建築を設計するにあたって様々な文化施設の実例を見学して回ったらしいが、それらの施設はどこも「無駄に大規模なホール」が設置されており、その同一性に違和感を覚えたという。
そのためこの施設では、地域に根差した文化会館を作りたいと考え、従来の無駄にでかいホールを設けるのではなく、地域規模に合った「ヒューマンスケールのホール」を設計している。
建築自体としては、上の写真を見る限り、円形の平面を持った建築にも見えるが、実は円形ではなく、内部に収まる大ホールの「扇形」の曲線部分がそのまま外形に現れた状態となっている。
7.石川県金沢港大野からくり記念館




- 住所:金沢市大野町4丁目甲2-29
- 竣工:1996年
- 用途:博物館
- URL:公式ページ
からくり記念館は、金沢市が生んだからくり師・大野弁吉の顕彰と、からくりの世界の収集・展示を目的に建設された博物館である。
コンセプト「からくりを象徴する建築」
内井昭三は「建築は本来からくり的なものである」という思想を基に、からくり館であるのならばそのからくり性をより一層表現するべきだと考え、この施設の設計の臨んでいる。
具体的には、博物館建築としては珍しく「木造」を採用しており、「からくり」の世界観を有機的な木組みによって表現したダイナミックな建築となっている。
内井昭蔵の関連書籍
今回はこれで以上になります。
今回ご紹介した建築は、内井昭蔵が設計した建築のほんの一部です。
そのため、今後も随時情報を更新していきたいと思っています。
気が向いたら、また本記事をご覧ください。
ではまた。
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