吉田五十八(よしだいそや)とは?

- 1894 東京府東京市に生まれる
- 1923 東京美術学校図案科卒業
- 1923 吉田建築事務所設立
- 1925 ヨーロッパ・アメリカを巡る
- 1946 東京美術学校教授に就任
- 1964 文化勲章受章
- 1974 死去(79歳)
吉田五十八は、住宅デザインを中心に、昭和期の日本建築界をリードしたと言われる建築家である。
代表作としては「吉田茂邸」「五島美術館」「歌舞伎座」などが挙げられ、住宅建築から美術館、劇場まで多種多様な作品を手掛けている。
吉田五十八が残した功績として特に大きいのは、日本伝統様式である「数寄屋造り」を独自に近代化し、日本伝統建築の魅力を後世まで伝承したことだ。
建築史家・藤森照信は「吉田五十八がいなければ今頃、日本にある料亭・旅館などはすべて洋風建築になっていた」と言及しており、吉田五十八が日本建築界に与えた影響の大きさがわかる。
今回は、そんな日本伝統建築の伝承者「吉田五十八」の建築作品6選をご紹介したいと思います。
【代表作】建築家吉田五十八の建築作品6選
1.旧吉田茂邸




- 住所:神奈川県中郡大磯町西小磯418
- 竣工:昭和30(1955)年代
- 用途:住宅
- URL:公式ページ
吉田茂邸は、戦後日本の内閣総理大臣を務めた「吉田茂」が、1945頃から生涯を閉じるまで住んでいた住宅建築である。
元々は、吉田茂の父・吉田健三の別荘として1884年に建設された建物だが、父の死後、吉田茂がその邸宅を引き継ぎ、増改築を繰り返して晩年まで利用していた住宅だ。
そんな歴史のある吉田茂邸だが、吉田五十八が設計を務めたのは、昭和30年代後半に竣工したとされる「新館」であり、吉田五十八建築に象徴される「近代数奇屋造り」が特徴的な建築となっている。
数奇屋造りとは、日本の伝統様式である「書院造」から格式や装飾を取り除き、より自由な様式に昇華した建築のことを指すが、吉田五十八はその数奇屋造りさえも近代化して、より洗練された建築空間を作り出している。
吉田茂邸は、2009年に発生した火災により焼失してしまったが、再建を願う声が多く、その結果、2017年に吉田五十八が設計した「新館」などが復元されて現在に至る。
2.小林古径邸




- 住所:新潟県上越市本城町7-1
- 竣工:1934年
- 用途:住宅
- URL:公式ページ
小林古径邸は、日本画家・小林古径の住まいとして1934年に建設された建物で、現在はその小林古径邸を移築・復元した建築物が、新潟県上越市の高田城址公園内に建てられている。
建築としては、日本伝統様式である「数奇屋造り」を近代化した「近代数奇屋建築」となっており、吉田五十八・初期の代表作として名高い。
具体的には、壁面に柱梁を露出させる「真壁」ではなく、壁面に柱梁を隠す「大壁」を採用するなどして、日本伝統の「数奇屋造り」をより簡素化したような建築空間を作り出している。
吉田五十八が生涯で数多く手がけた「近代数奇屋建築」の先駆け的な作品である。
3.歌舞伎座(第4期)




- 住所:東京都中央区銀座4-12-15
- 竣工:1950年
- 用途:劇場
- URL:公式ページ
歌舞伎座は、東京・銀座に建つ、歌舞伎を専門的に扱う劇場建築である。
歌舞伎座の歴史は長く、1889年に開場して以来、幾度となく建て直しが行われ、現在建っている建築はこれで5代目となる。(隈研吾・三菱地所設計による共同設計)
吉田五十八が設計を担当したのは、1950年に竣工した「第4期・歌舞伎座」だ。
建築としては、東京大空襲により焼失した「第3期・歌舞伎座」の構成を踏襲し、奈良・桃山時代の様式を鉄筋コンクリート造で再現した、日本伝統のデザインとなっている。
4.日本芸術院会館




- 住所:東京都台東区上野公園1-30
- 竣工:1958年
- 用途:講堂・展示室・談話室など
- URL:公式ページ
日本芸術院会館は、芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するために設けられた国の栄誉機関「日本芸術院」の会議や日本芸術院授賞式などを行う場として、1958年に竣工した施設である。
建築としては、鉄筋コンクリート造で「平安朝様式」風のデザインを採用しており、吉田五十八らしい「日本伝統」と「近代建築」が融合した作品となっている。
この建築は通常、日本芸術院会員の会議などの場として用いられるが、不定期で中にある展示室に「日本芸術院所蔵の美術作品」などを一般公開している。
5.五島美術館








- 住所:東京都世田谷区上野毛三丁目112-3他
- 竣工:1960年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
五島美術館は、実業家・五島慶太の美術コレクションを保存・展示を主目的として1960年に建設された美術館である。
建築としては、平安時代に京都で成立した貴族住宅の様式「寝殿造」を参照しており、寝殿造を象徴する「大径の丸柱」や「深い軒による水平性の強調」などが象徴的な建築物となっている。
数奇屋造りをより簡素化した「近代数奇屋建築」の住宅作品に定評がある吉田五十八だが、このような寝殿造を参照した作品も複数残しているのが、これまた面白い。
6.大和文華館








- 住所:奈良県奈良市学園南1丁目11番6号
- 竣工:1960年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
大和文華館は、東洋古美術を中心に取り扱う、奈良県奈良市に建つ私立美術館である。
建築としては、城郭や蔵をイメージさせる「なまこ壁」をイメージした外壁が日本的な外観を作り出しているが、一方で「水平ラインが際立った構成」や「ピロティ」などの近代的要素も取り込まれている。
つまり、吉田五十八お得意の「日本伝統×近代建築」を実現した作品というわけだ。
2枚目の写真は、展示室が収まる棟だが、この展示室は「竹が植えられた小さな中庭」を囲うように設置されているため、この美術館は「竹の庭の美術館」という愛称でも親しまれている。
吉田五十八の関連書籍




今回はこれで以上になります。
今回ご紹介した建築は、吉田五十八が設計した建築のほんの一部です。
そのため、今後も随時情報を更新していきたいと思っています。
気が向いたら、また本記事をご覧ください。
ではまた。
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