大江宏(おおえひろし)とは?
- 1913 秋田県に生まれる
- 1938 東京帝国大学工学部建築学科卒業
- 1938 文部省勤務
- 1940 三菱地所建築部入所
- 1946 大江建築事務所設立
- 1989 死去(79)
大江宏は、戦後に数多くの公共建築を手がけたことで知られる、昭和期を代表する建築家である。
代表作としては「乃木神社」「国立能楽堂」「角館町伝承館」などが挙げられ、神社・能楽堂・伝承館など多種多様な作品を手掛けたことでも知れている。
また、大江宏の設計スタイルを述べる際には、決まって「混在併存」という言葉が用いられるが、この言葉は、戦後日本建築界で主流だった「日本伝統×モダニズム」の設計スタイルではなく「日本伝統+モダニズム」というスタイルを大江宏が採用したことを端的に示した言葉となっている。
つまり、日本伝統とモダニズムを「融合」するのではなく「併存」させるスタイルを確立した建築家が大江宏というわけだ。
今回は、そんな異色の建築家「大江宏」の建築作品6選をご紹介したいと思います。
【代表作】建築家大江宏の建築作品6選
1.乃木神社

- 住所:東京都港区赤坂8-11-27
- 竣工:1983年
- 用途:神社
- URL:公式ページ
乃木神社は、明治期の軍人「乃木希典」と、その妻「乃木静子」の英霊を祀ることを目的に、東京都港区赤坂の地に設立された神社建築である。
最初に乃木神社が建設されたのは1923年(大正12年)。
設計は大江宏の父で建築家の「大江新太郎」が務めた。
その後、東京大空襲によって乃木神社の大部分が焼失してしまったが、戦後、全国の崇敬者から再建を願う声があり、1962年、大江宏の設計によって再建された。
社殿の構成としては、本殿・幣殿・拝殿を囲うようにして配された回廊が特徴的な建築となっているが、参拝者が目にする拝殿の外観としては、わずかに赤みがかった「銅板葺きの大屋根」が象徴的な外観を作り出している。
2.九十八叟院(現・小平市平櫛田中彫刻美術館)




- 住所:東京都小平市学園西町1-7-5
- 竣工:1968年
- 用途:住宅(現・美術館)
- URL:公式ページ
九十八叟院は、彫刻家「平櫛田中」が99歳の時に隠居のための邸宅として、東京都小平市に建設した建築物である。
99歳の時に建てた邸宅だから「九十九叟院」という名前を付けたそう。
現在、この邸宅は「小平市平櫛田中彫刻美術館」として利用されており、平櫛田中の顕彰や、彼の作品の保存・展示などを行っている。
建築としては「方形屋根」「寄棟屋根」「切妻屋根」など様々な形態を付加された6つの棟によって構成されており、それらの屋根が重層し、魅力的な和風空間を作り出している。
3.国立能楽堂




- 住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4181
- 竣工:1983年
- 用途:劇場
- URL:公式ページ
国立能楽堂は、能楽の保存と復興を目的として、1983年・東京都渋谷区千駄ヶ谷に建設された劇場施設である。
建築としては、複数の「方形屋根」が重層した和風の外観が特徴的であり、周囲に広がる閑静な住宅街と調和する構成となっている。
また、大江宏と言えば、モダニズムと日本伝統を融合するのではなく併存させた「混在併存」というスタイルをとることで有名だが、この建築でもそのスタイルがとられている。
具体的には、内部空間が「コンクリートの躯体」と「木造の造作」という2つの要素のよって構成されており、洋と和を組み合わせたような不思議な空間になっている。
4.大濠公園能楽堂




- 住所:福岡県福岡市中央区大濠公園
- 竣工:1986年
- 用途:劇場
- URL:公式ページ
大濠公園能楽堂は、福岡県福岡市にある大濠公園内に建つ、能楽を専門的に扱う劇場施設である。
国立能楽堂(1983年)に続いて、大江宏が設計を務めることとなった。
施設全体としては、大小5つの「方形屋根」が群れるように配置されており、それぞれの屋根下空間は「歩廊」「広縁」といった回遊空間によってつなげられている。
さらに、この建築でも大江宏特有のスタイルである「混在併存」が採用されており、鉄筋コンクリート造の躯体に対して、木造の造作物が付加された和洋混交の空間がつくられている。
5.三溪記念館




- 住所:横浜市中区本牧三之谷293三漢園内
- 竣工:1988年
- 用途:資料館
- URL:公式ページ
三溪記念館は、実業家や茶人として知られる「原三渓(原富太郎)」の顕彰や、所蔵美術品の保存・展示を目的として1988年に建設された建物である。
施設の全体像としては、「寄棟屋根を持つ5つの棟」と「方形屋根を持つ1つの棟」という、計6つの棟が、大きな池を取り囲う形で配置されている。
また、外壁や構造体には「コンクリート」を使用しつつ、内部では木造の造作物が付加されており、大江宏特有の和と洋を混交した「混在併存」スタイルが用いられていることがわかる。
6.角館町伝承館(現・仙北市立角館樺細工伝承館)




- 住所:秋田県仙北郡角館町表町下丁10―1
- 竣工:1978年
- 用途:展示施設+教育施設
- URL:参考ページ
角館町伝承館は、秋田県仙北市角館町で有名な伝統工芸品「樺細工」を中心に、民俗資料を展示する施設として1978年に建設された建築物である。
現在は「仙北市立角館樺細工伝承館」という名称で知られている。
施設の全体構成としては、「大きな中庭」を囲うようにして「切妻屋根を持った棟」が配置された構成が特徴的で、大江宏建築でよく見られる複数の屋根を組み合わせた構成となっている。
また、切妻屋根という日本伝統の形態を用いつつも、外壁は「レンガタイル」で仕上げていたり、内部では西洋建築特有の「アーチ形状」が用いられているなど、大江宏特有の和と洋を混合した「混在併存」スタイルが採用されているのも特徴的だ。
大江宏の関連書籍
今回はこれで以上になります。
今回ご紹介した建築は、大江宏が設計した建築のほんの一部です。
そのため、今後も随時情報を更新していきたいと思っています。
気が向いたら、また本記事をご覧ください。
ではまた。
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